よみがえれ有明海

1日も早い開門調査の実施で有明海の再生を

和解協議の提案を拒否する国の対応に対し、よみがえれ!有明訴訟弁護団が抗議声明

和解協議の提案を拒否する国の対応に対し、よみがえれ!有明訴訟弁護団が抗議声明

声明

 

裁判所の和解協議の提案を一顧だにせず、

議論自体を避けようとする、国の独善的かつ異常な対応に抗議する

 

2021年9月15日

よみがえれ!有明訴訟弁護団

 

1 国は、和解協議が当面の焦点となっている請求異議差戻審において、9月10日、裁判所に対して和解協議に関する第2回の意見書を提出した。

内容は、第1回の意見書同様に開門の余地を残した和解協議の席に着くことはできないと述べ、「和解協議の進め方や和解条項の内容についての協議にはもはや応じることができない」と結論付けるものである。

和解協議の歴史的意義を全く理解せず、真摯に検討することさえ避けて通る国の対応は、独善的との非難に値するととともに、およそ公共の利益を代表して訴訟に携わるはずの国の訴訟対応としては、極めて異常であると言わざるをえない。

2 この間の経過を振り返ってみると、裁判所は、本年4月28日に「和解協議に関する考え方」を発表し、そのなかで、紛争全体の、統一的・総合的・抜本的解決、将来に向けての確固とした方策のためには、判決だけではそのような広い意味での解決には寄与することができず、話し合いによる解決の外に方法はないという見解を示した。その上に立って、和解協議を通じて、国民的資産である有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して将来にわたるより良き方向性を得るという、和解協議の歴史的意義についても言及した。

これに対し、わたしたちは諸手を挙げて賛成し、裁判所の和解協議の提案を高く評価した。賛同の声は、有明海沿岸からのみならず、全国的に広がった。

ところが国は、裁判所が考え方を発表した本年4月28日の次の期日である6月2日になっても裁判所の考え方に対する態度を明確にせず、次の期日である7月14日には、わたしたちがいない席上において、口頭で裁判所に態度表明したものの、裁判所からは文書できちんと国の立場を明らかにするように求められた。

その結果提出されたのが、本年7月30日付の第1回意見書であった。

同意見書で、国は、「平成29年4月25日付け農林水産大臣談話のとおり、開門しないとの方針の下、開門によらない基金による和解を目指すことが本件の問題解決の最良の方策である」、「控訴人は、開門の余地を残した和解協議の席に着くことはできない」と、今回、裁判所が考え方を発表する前から述べてきた国の立場を繰り返し、裁判所の考え方に基づく和解協議を受け入れない旨の回答をした。

同意見書に対してわたしたちは、全面的に反論・批判した上申書(8)を裁判所に提出し、8月18日の期日に臨んだ。

同期日において国は、第1回意見書に書いたとおりと繰り返し、なんら噛み合う議論を行おうとしなかった。そこで裁判所から国に対し、わたしたちの上申書(8)中、第3の3において提案した具体的な和解協議の進め方(開門阻止確定判決の指摘を踏まえた開門事前対策工事の検討、法務省と農水省だけでなく、有明海特措法を所管する環境省などの関係省庁を含めて和解協議に対応すること、裁判所の考え方の文書を秘密文書のように扱わず、進行協議の結果を踏まえた国会その他の議論に積極的に応じること、議論を活性化し、充実させるため、適宜、裁判所外での直接折衝も実施すること、現時点での和解案を提案すること)、および、国が第1回意見書において言及した非開門を前提とした和解協議における、基金案以外の和解条項の案について、意見を述べるよう要請した。これは少しでも議論を活性化しようとする裁判所の配慮の表れであろう。

以上が、今回、国が提出した第2回意見書に至る経緯である。

3 ところが、国の第2回意見書における意見は、わたしたちが上申書(8)で提案した具体的な和解協議の進め方については、「回答の必要を認めない」、国の基金案以外の和解条項の案については、第1回意見書の記載は「現時点において、基金案以外の具体的な和解条項案があることを念頭においたものではない」などと、木で鼻をくくるが如き内容で、およそ真摯な回答の名に値しないものであった。

国は第2回意見書の結語部分で、国とわたしたちは非開門/開門の方向性について正反対の立場にあるため、その方向性が定まらないまま期日を重ねても、紛争の早期解決に資するものではない、などと強弁する。しかしながら、わたしたちは、この間提出した複数の上申書において、非開門/開門が形式的には正反対の結論であっても、開門阻止訴訟の当事者、わたしたち、国の3者が、非開門/開門をめぐり、どのような利害関係に立っているかをきちんと分析するならば、それらの利害調整は可能であり、調整方法についても存在することを指摘してきた。

国は、こうしたわたしたちの指摘には一切答えないばかりか、裁判所の考え方に対する具体的な意見すら述べないまま、当事者はもとより多くの国民が賛同している裁判所提案の和解協議を葬り去ろうとしている。

こうした国の対応が、冒頭で述べたとおり、独善的との非難に値するととともに、およそ公共の利益を代表して訴訟に携わるはずの国の訴訟対応としては、極めて異常であると言わざるをえないことは明白であろう。

                                       以上