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よみがえれ!有明訴訟弁護団が、国の不誠実な意見書への反論と釈明を求める意見書を提出

よみがえれ!有明訴訟弁護団が、国の不誠実な意見書への反論と釈明を求める意見書を提出

よみがえれ!有明訴訟弁護団が、国の不誠実な意見書への反論と釈明を求める意見書を提出しました。

 

令和元年(ネ)第663号 請求異議控訴事件

控訴人 国

被控訴人 平方 宣清 外47名

 

 

意見書

第2回控訴人意見書への反論と求釈明

 

2021年9月17日

福岡高等裁判所第2民事部 御中

 

被控訴人ら代理人

弁護士 馬奈木 昭雄

弁護士 堀 良一

弁護士 吉野 隆二郎

 

第1 本書面について

本年9月10日、前回期日における裁判所の求めに応じ、控訴人は第2回控訴人意見書を提出した。

そこで、本書面では、第2において、前提として裁判所の「和解協議に関する考え方」(以下、「考え方」と言う。)発表以来の経緯について確認し、第3において、今回提出された控訴人の第2回控訴人意見書に反論し、第4において、それを踏まえ控訴人に対する求釈明を行う。

なお、この間、被控訴人らは「諫早湾干拓事業をめぐる紛争の全面的解決のための和解協議に関する上申書」を複数回提出し、2回目以降は文書名に番号を付してきたが、本書面において引用する場合は「上申書2」などと、「上申書」と略した上で番号を付して表示する。

第2 裁判所の「和解協議に関する考え方」発表以来の経緯

1 裁判所は、「考え方」において、諫早湾干拓地潮受堤防各排水門の開門等を巡る紛争の実情、和解協議の必要性、目的、手順について、概要、次のとおりの見解を示した。

(1) 本件紛争は長期にわたり継続し、複雑かつ深刻化している。

(2) 本件紛争に関連する各種紛争の状況および有明海沿岸地域の社会的・経済的現状等にかんがみると、狭く本件訴訟のみの解決に限らない、広い意味での紛争全体の、統一的・総合的・抜本的解決及び将来に向けての確固とした方策を検討し、その可能性を探るべきである。

(3) 本件の判決だけでは、そのような紛争の統一的・総合的・抜本的解決には寄与することはできず、話し合いによる解決の他に方法はない。

(4) そうした話し合いによる解決は、社会的要請等のほか、当事者や関係者からの期待などを含め、その前提となる素地も、これまでの経緯の中で最も高まった状況にある。

(5) 互いの接点を見いだせるよう、当事者双方に限らず、必要に応じて利害関係のある者の声にも配慮しつつ、その上で当事者双方が腹蔵なく協議・調整・譲歩することが必要である。

(6) とりわけ、国民の利害調整を総合的・発展的観点から行う広い権能と職責とを有する控訴人のこれまで以上の尽力が不可欠であり、まさにその過程自体が今後の施策の効果的な実現に寄与する。その意味でも、本和解協議における控訴人の主体的かつ積極的な関与を強く期待する。

(7) 国民的資産である有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して将来にわたるより良き方向性を得るべく、本和解協議の過程と内容がその一助となることを希望する。

2 この「考え方」に対し、被控訴人らは本年5月31日付上申書6において、直ちに賛同の意思を表明した。

賛同の声は、被控訴人らのみにとどまらず、有明海沿岸地域はもとより全国に、また、漁民、市民、研究者、自然保護団体と多様な各層に広がった。国会においても関連委員会審議において複数回取り上げられた。その状況は、上申書6及び同7において詳細に紹介したとおりである。

「考え方」への反響は極めて大きく、その受け止め方は積極的で、しかも、「考え方」に対する否定的・批判的な声は皆無である。

3 ところがこうした期待の声とは裏腹に、控訴人は、従来からの立場に固執して、これを繰り返すだけで、「考え方」の発表とこれに対する賛同の声の広がりという新たな状況を無視し、これを敵視するかの如き対応を繰り返した。

すなわち、控訴人は、裁判所が考え方を発表した本年4月28日の次の期日である6月2日になっても裁判所の考え方に対する態度を明確にせず、マスコミ対応や、国会における答弁のなかで、「4月28日の進行協議期日における福岡高裁の提案内容については、裁判所が非公開の場である進行協議期日を設定したという趣旨に鑑み、答えは差し控えさせてもらう」などと述べて、「裁判所の考え方」をあたかも秘密文書であるかの如き扱いをし、その内容を紹介して、これに対する控訴人の見解を明らかにすることを頑なに拒んできた。

6月2日の次の期日である7月14日には、控訴人らがいない席上において、口頭で裁判所に態度表明したものの、裁判所からは文書できちんと国の立場を明らかにするように求められた。

その結果提出されたのが、本年7月30日付の第1回控訴人意見書であった。

同意見書で、控訴人は、「平成29年4月25日付け農林水産大臣談話のとおり、開門しないとの方針の下、開門によらない基金による和解を目指すことが本件の問題解決の最良の方策である」、「控訴人は、開門の余地を残した和解協議の席に着くことはできない」と、今回、裁判所が考え方を発表する前から述べてきた控訴人の立場を繰り返し、裁判所の考え方に基づく和解協議を受け入れない旨の回答をした。

同意見書に対して被控訴人らは、全面的に反論・批判した上申書8を裁判所に提出し、8月18日の期日に臨んだ。

同期日において控訴人は、第1回控訴人意見書に書いたとおりと繰り返すのみで、なんら噛み合う議論を行おうとしなかった。そこで裁判所から控訴人に対し、被控訴人らの上申書8中、第3の3において提案した具体的な和解協議の進め方(開門阻止確定判決の指摘を踏まえた開門事前対策工事の検討、法務省と農水省だけでなく、有明海特措法を所管する環境省などの関係省庁を含めて和解協議に対応すること、裁判所の考え方の文書を秘密文書のように扱わず、進行協議の結果を踏まえた国会その他の議論に積極的に応じること、議論を活性化し、充実させるため、適宜、裁判所外での直接折衝も実施すること、現時点での和解案を提案すること)、および、控訴人が第1回控訴人意見書において言及した非開門を前提とした和解協議における、基金案以外の和解条項の案について、意見を述べるよう要請した。これは少しでも議論を活性化しようとする裁判所の熱意と配慮の表れであろうと思料する。

以上が、今回、控訴人が提出した第2回控訴人意見書に至る経緯である。

第3 9月10日付第2回控訴人意見書について

1 第2回控訴人意見書における控訴人の意見は、被控訴人らが上申書8で提案した具体的な和解協議の進め方については、「回答の必要を認めない」、控訴人の基金案以外の和解条項の案については、第1回控訴人意見書の記載は「現時点において、基金案以外の具体的な和解条項案があることを念頭においたものではない」などと、木で鼻をくくるが如き内容のないもので、およそ裁判所の要請に対する真摯な意見とは言えない。

これは国会において農水大臣が示してきた「昨年(2019年)十月,江藤前大臣が現地視察の際に、さまざまな立場の関係者がバランスよく参加するのであれば一堂に会して話し合うこともあってもよいと発言されたと承知をいたしておりますが、私もその考えは全く同様でございます。」(2020年11月19日衆院農水委員会・大串議員質問に対する答弁)との基本姿勢や、本年6月2日の進行協議翌日、「関係省庁と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。」、「一般論として申し上げれば、国は訴訟の手続に従って適切かつ誠実に対応しておるところでございます。」(2021年6月3日衆院農水委員会大串議員質問)と答弁した進行協議に臨む姿勢にもそぐわない、余りにも頑なで官僚的なものである。

とりわけ、被控訴人らの上申書8中、第3の3においては、裁判所内においてのみならず裁判外においても、これまで直接折衝を行ってきた実績を踏まえ、対話を重ねることの重要性に触れているところ、それすらも否定する控訴人の態度は、これまでにもなかった異常な対応である。

2 また、控訴人は第2回控訴人意見書の結語部分で、控訴人と被控訴人らは非開門/開門の方向性について正反対の立場にあるため、その方向性が定まらないまま期日を重ねても、紛争の早期解決に資するものではない、などと強弁する。しかしながら、被控訴人らは、この間提出した複数の上申書において、非開門/開門が形式的には正反対の結論であっても、開門阻止訴訟の当事者、控訴人、被控訴人らの3者が、非開門/開門をめぐり、どのような利害関係に立っているかをきちんと分析するならば、それらの利害調整は可能であり、調整方法についても存在することを指摘してきた。

控訴人は、こうした被控訴人らの指摘に対して具体的に噛み合った議論は一切せず、しかも、未だに、本書面第2、1で概要を確認した裁判所の考え方に示された裁判所の見解に対しても、具体的な意見すら述べないままである。

控訴人の対応は、余りにも独善的であると言わざるをえない。およそ公共の利益を代表して訴訟に携わるはずの国の訴訟対応としては、極めて異常である。

かくも不真面目な控訴人の対応を放置したままで、当事者はもとより多くの国民が賛同している裁判所の和解協議の提案を葬り去ることはできない。

被控訴人らは、今後とも粘り強く、裁判所の考え方の精神に基づき、訴訟の内外で話合いによる紛争解決を訴え続ける所存である。

以上を踏まえ、第2回控訴人意見書に対しては、次のとおり、控訴人に釈明を求める。

なお、被控訴人らは、次回期日前に被控訴人らの考える和解案を提案する所存である。

第4 国に対する求釈明

1 裁判所が、考え方で示した本書面第2,1記載の(1)ないし(7)の各見解について、個別に、賛否を明確にして、控訴人の意見を表明されたい。

2 控訴人は、「開門によらない基金による和解を目指すことが本件の問題解決の最良の方策」と主張するが、「国民的資産である有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して将来にわたるより良き方向性を得る」という裁判所指摘の和解協議の歴史的意義は、基金案によって達成されるのか否か、達成されると主張するのであれば、それは如何なる意味においてであるかを明らかにされたい。

3 控訴人は第2回控訴人意見書の結論を述べるにあたって、「控訴人と被控訴人らが非開門/開門の方向性について正反対の立場にある」ことを強調するが、被控訴人らが上申書8の第3,1の(3)「各当事者の利害の内容及び利害調整の可能性と方向性」において、①「各当事者の利害の内容」、②「開門・非開門の一見正反対の利害は調整可能であること」として論じたように、それは和解協議の障害にはならない。控訴人があくまでもその正反対の立場を重視するのであれば、こうした被控訴人らの主張に具体的に反論されたい。

4 控訴人は、第2回控訴人意見書の結論として「速やかに進行協議を打ち切り、口頭弁論期日を指定して弁論を終結し、判決の言い渡しをすることを求める」と述べるが、本書面(2)、1の(2)「本件紛争に関連する各種紛争の状況および有明海沿岸地域の社会的・経済的現状等にかんがみると、狭く本件訴訟のみの解決に限らない、広い意味での紛争全体の、統一的・総合的・抜本的解決及び将来に向けての確固とした方策を検討し、その可能性を探るべきである。」、(3)「本件の判決だけでは、そのような紛争の統一的・総合的・抜本的解決には寄与することはできず、話し合いによる解決の他に方法はない。」との裁判所の見解との関係で、どのように判断してその結論に達したのか、具体的に明らかにされたい。

5 控訴人は、同じく第2回控訴人意見書の結論として「いたずらに期日を重ねても、協議の進展は望めず、紛争の早期解決に資するものではない」と述べるが、それでは控訴人は如何にして紛争の早期解決を図ろうとするのか、具体的に明らかにされたい。

6 本書面(2)、1の(6)「とりわけ、国民の利害調整を総合的・発展的観点から行う広い権能と職責とを有する控訴人のこれまで以上の尽力が不可欠であり、まさにその過程自体が今後の施策の効果的な実現に寄与する。その意味でも、本和解協議における控訴人の主体的かつ積極的な関与を強く期待する。」との裁判所の見解を、控訴人は受け入れるのか否かを述べ、受け入れるのであれば、どのようにしてそれを実現するのか、受け入れないのであればその理由を、それぞれ具体的に明らかにされたい。

以上